その082:1歳の娘

1歳になる娘はお母さん恋しさと夜鳴きが激しい。

お母さんが見えなくなると泣き出し、お父さんがあやしても泣き止むことはない。また、夜中に12回は夜鳴きをする。

そんな子育てにお母さんは少し疲れ気味。ただ、娘のことや子育てについては真面目な考えを持っている。

食事については、「化学調味料からの健康的な害を避けるべき」という考えの下、可能な限りオーガニック食品を摂取するようにしており、カフェインや砂糖は控えている。

また、「赤ん坊であれ、大人と同じものを同じように食べるべき」という考えから、特別な離乳食は一切与えていない。現に、毎回の食事は大人と同じものを食べているし、りんごや人参といった固形物も丸かじりしている。

しつけについては、基本的に「何事も自らの体験から学ぶべき」という考えがあるので、おおむね娘がやりたいことを自由にさせている。周辺にある物を触ったり、口にしたり…、時には両親の財布の中身をばら撒いたりもする。それでも両親はニコニコとその様子を見ているだけである。

ある時、娘が食器を落として割った。しかし、お母さんは「こらっ!」と怒鳴ったり、叱ったりせず、「おや、おや」と言って、食器の破片を片付けていた。「なぜ叱らないの?」とたずねると「娘は食器と触れ合って学んでいただけじゃない。ましてや、叱っても、まだ言葉が分からないし、なぜ食器を落とすことがいけないことなのか分からないでしょ。」とのこと。

ある晩は、お風呂を浴びている際、ボディーソープ混じりのお湯を口にし始めた。「止めなくて大丈夫なの!?」と聞くと「オーガニックだから大丈夫。結構、そこまで悪い味でもないんだよ。」と笑いながらその光景を見ていた。

忍耐力や許容力を要する子育てのように感じられる。また、日本では子供が大人にとって都合の悪いことをすると怒鳴ったり、危険なことをしようとすると叱ったりする傾向があるだけに、とても興味深い子育て方法である。