その177:牧場の風景(牛と夕暮れ)

夕暮れ時。

一頭の牛が他の牛よりも少し遅れて小屋までの道を歩いていた。

歩いていた…と言っても、まっしぐらに小屋まで歩いていたのではなく、1歩、2歩…歩いては止まり草を食べ、また1歩、2歩…歩いては止まり草を食べ…、という具合である。

そんなマイペースな牛を背景に、刻々と夕焼け空は赤みを増し、そして次第に暗闇がかっていき…、夜が近づいていた。

遠くには風力発電用の風車がユックリと回転しているのが見えた。

「近い将来、日本の故郷でもこんな光景が見れるようになると良いのになぁ…。クルクルと自然の循環を利用した有機農業、そして風力発電…。そこに一日の終わりを告げる夕焼け空が包み込む…。」

原発事故が一日でも早く収まりますように…。
被害が最小限に食い止められますように…。
そして、同じ過ちを犯さないよう、発電方法を含め新たな道を一つの国として選び、歩まれますように…。

…と人事じゃないはずなのに、思わず人事のように願ってしまった瞬間であった。

「時間の速さを変えることはできないかもしれないけど、その瞬間に与えられたものを堪能する時間は実は夫々にゆだねられているんだなぁー」とも感じた。

そんな9月下旬の夕暮れ時でありました…。