とある日の午後。
他の人が外出している際、一人、小屋を見渡すと横たわっている妊娠中の母牛のお尻から仔牛の足が2本出ていることに気が付きました。
「え?ええ??えええ???」
と一瞬、目の前の光景を疑いました。
さらに驚かされたのは、そんな体であるにもかかわらず、母牛に近づくと何事も無いかのように立ち上がって、歩き始めたのです。
今にも仔牛が出産されようとしていたのです。
足から出てくるということで懸念事項もありましたが、母牛は歩ける状態であった為、所定の場所まで歩かせ、自然に出産させることにしました。
所定の場所まで歩かせた頃には、さすがの母牛も陣痛を感じ始めたのでしょうか、すぐに体を横たわらせ、激しい動きをしなくなりました。その後、1時間程、目には涙らしきものを浮かべながら、たまに「モー」と鳴きながら体を動かし仔牛を出産させました。
出産後、母牛はしばらく横たわったままでした。出産の痛みがひくのを待っていたのでしょう。そんな横で、生まれたばかりの仔牛はひとりでも歩き始めようと元気に動いていました。そして、数時間後には母牛、仔牛ともに元気に立ち上がり、仔牛は母牛の乳を突いて乳を飲んでいました。
やはり、出産には何度立ち会っても、感動させられます。
母親の苦労や愛、生命が生まれ持って秘めた能力…、「この命を無駄にはしたくない」と自分自身に言い聞かせられます。