多くの子どもたちが楽しみにしているナイトハイク。日が落ちてから、森や海を散策するのである。
日中は太陽の下、夜は電気の下で暮らすことに慣れている大半の子どもたちにとっては、暗闇の中で改めて動物が生まれ持っている感覚について学ぶ機会となる。
例えば視覚。多くの人間が視覚を頼りに位置や物体についての情報を得ようとする。目の構造には、色を識別する部分と白黒を識別する部分がある。日夜、明るい場所では色を識別する部分が活発に働いている一方、白黒を識別する部分は殆ど働いていない。この働きを体感するためにナイトハイクでは、子どもたちに色紙を配り、その色を当てるアクティビティを行う。
そして、白黒を識別するには、Roxicideという物質が必要となる。その為、明るい場所から暗闇へ移動すると反射的にRoxicideを作り始めるが、十分な量が作られるまでには、多少の時間を要する。見えやすさの違いは、ナイトハイクを始めた頃と終わりの頃の見えやすさの違いから体験することができる。
また、視覚よりも聴覚を利用する動物もいる。例えばコウモリは、自ら発した音波が獲物などの物体に当たり、跳ね返ってくる音波によって、物体の位置を把握する。ナイトハイクでは、この特性を理解するためのゲームをする。2人の人間を囲んで他の人間は円を描いて立つ。円の中の2人のうちの1人は目をつぶり、「バット」と言いながら、もう1人を捕まえなければならない。円の中のもう1人は、「バット」と言われる度に「モス」と言うので、目をつぶっている人は、この「モス」という声を頼りに獲物の位置を当てるのである。
聴覚については、2つの耳が正反対の方向を向いている動物もいれば、両耳が同じ方向を向いている動物もいる。両耳に両手を付けて前方からの音を聞き入れようとすると、後方からの音が聞き難くなることを簡単に体験することができる。
他にも、ナイトハイクでは子どもの興味をそそるアクティビティで溢れている。ある程度乾いた口の中でミント味のタブレットを噛むと光が発せられる様子は、暗闇の中だからこそ、よく観察することができる。
そして、最後に子どもたちには「以後、朝まで誰とも話さない。」という課題が与えられる。ナイトハイクで体験したこと、感じたことを自分の中に留めたり、考えを深めたりするためではないだろうか…。元気いっぱいの6年生にとって、意識的に誰とも会話をしないという機会は貴重なのではないだろうか。ナイトハイクを含め、プログラムには、将来、振り返った際に印象に残る体験で溢れている。